この記事では、「トランプ政権で、米国株市場が暴落する可能性」について、考察していきます。
11月5日に行われた大統領選挙で、トランプ氏が当選し、上下院も共和党が過半数を超えたことで、トランプ氏の政策が思い通りに行われる、「トリプルレッド」体制が構築されました。
これを受けて、とりあえず株式市場は上昇し、トランプトレードと騒がれたものの、約2週間立った現在、その動きも落ち着いてきており、ご祝儀相場も終わりかな、という状況にあります。
トランプ大統領のイメージは、不動産業で巨額の富を築き上げた、商売上手なビジネスマンという感じだと思います。なので、アメリカの株式市場もこれからさらに上がるのではないか?と期待をしている人も多いのではないでしょうか?
ですが、私の見立てでは、それはちょっと違うのではないか?もしかしたら、かなり株価が下がるのではないか?と考えています。
その理由について、これから詳しく解説していきたいと思います。
なお、投資を推奨するものでもありませんし、あくまで個人的な意見ですので、その辺も含めて、ご覧ください。
それでは、参りましょう。
1、株価が下がる理由
理由は大きく3つあります。
(1)政府の支出の大幅な削減
1つ目は、財政支出の大幅な削減によって、国から仕事をもらっていた企業の業績が、大幅に下がる可能性が高いからです。
トランプ氏が、大統領に当選して、初めて会談する海外の首脳を誰かご存知ですか?
第1期トランプ政権の時は、安倍元首相でした。当選して2週間後には、NYで会談を行い、これによって、日米関係はかなり良好になったと評価されています。
では、今回はどうなのか?
石破首相も、トランプ氏に電話で祝意を告げ、早期の会談をお願いしましたが、結局、正式に就任する1月以降に延期されてしまっています。日本ではないのです。
答えは、意外かもしれませんが、アルゼンチンのミレイ大統領でした。
ミレイ大統領は、昨年11月に大統領選挙で勝利し、アルゼンチンで強烈なリストラを行なって、物価の沈静化を進めている、経済学者の大統領です。
ミレイ氏の政策は、本当に過激で、18あった官公庁を9つに再編し、補助金なども廃止して、政府の支出を3割削減しました。
これによって、失業率は上昇しているものの、インフレは沈静化して、現在国の建て直しの最中にあります。
トランプ氏は、8月にイーロンマスク氏と、X上で対談を行った時に、政府の無駄な支出を削るために、政府効率化委員会を立ち上げましょう、と言う話がされました。
ちなみに、この話をしていた時に、話題に上がったのが、ミレイ大統領だったのです。トランプ氏は、ミレイ氏に対して「彼は本当に素晴らしい仕事をしていると聞いている。それはアルゼンチンを再び偉大にする。」と賛辞を送っています。
ミレイ氏は、経済学者であり、どうやれば、アルゼンチンが立て直せるのかを考え、政策に移しています。
このような人物が、トランプ氏と1番始めにあった海外の首脳なのです。
つまり、これから、アメリカも同じように、政府のリストラをガンガンやろうと思っているので、ミレイ氏に意見を聞きたかったのではないでしょうか。
実際、トランプ氏が当選したことで、政府効率化委員会の構想はけっこう進んでいるようです。
その内容を見てみると、
- 2兆ドル(約300兆円)の政府予算の削減が目標
- 2026年7月で解散するプロジェクトであり、政府外で運営される
- 一般市民も巻き込んで、無駄な税金の使い方ランキングなどを作って、国民の関心を向かわせる
- 無償で週80時間以上、政府のコスト削減のために、働く高IQの政府革命家を募集中
など、かなり過激にやりそうなんですよね。
意外に思うかもしれませんが、アメリカの政府職員の数は、日本よりはるかに多いです。
日本の公務員の数は、約300万人ですが、アメリカの公務員は、2,300万人もいます。人口が3倍違いますから、単純に3倍しても、アメリカの方が倍以上いる計算になります。
そして、議会が期限付きでつけた予算に対して、期限が終わった後もお金を出し続けているプログラムが、1200以上、金額にすると年間70兆円以上もあると言うのです。
やばすぎですよね。
なので、このような政府の無駄な支出によって、かなり儲けていた大企業は多いと考えられます。
そのような企業は、トランプ政権になれば、売上がガクッと減るので、株価も大きく下落することが予想されます。
実際に、製薬会社や、軍需産業などが、すでにトランプ氏当選によって、すでに下落し始めています。
*ファイザーの株価
特にファイザーなどの製薬会社については、ケネディ大統領の甥っ子のロバート・F・ケネディjrが、保健福祉省、日本で言うところの厚生労働省の長官に、トランプ氏が指名したことで、かなり苦しい環境になると考えられます。
例えば、アメリカでは国民皆保険がないのですが、一人当たりの医療費の負担額、そして、GDPに占める医療費は、世界に比べて突出しています。
これほどのお金が支払われているのに、国民全員が安心して病院に通うことができないのです。
そもそも、アメリカの政治制度は、1946年にロビイング規制法という法律ができてから、企業がロビイストを通じて政治家に賄賂を贈ることが合法化されたことで、企業に都合の良い法律が次々と作られてきました。
そして、医療・製薬業界の毎年のロビイング費用は、他の業種に比べても、かなり高額なこともわかります。
これらのことから考えると、いかに、薬代や、医療費、保険料などの価格が高いのかが、想像できますよね。
このように、税金の隠れて、無駄に高い価格を支払わされているものに対して、これから大鉈を振るっていく、というのが、トランプ政権なのです。
アルゼンチンはどうなっているのか?
ちなみに、アルゼンチンでは、同様のことをやってどうなっているのか?というと、失業者が増えて、お金を使えなくなった元公務員が増えているため、インフレが収まり始めています。
また、国内の消費は落ち込んでおり、貧困率は増加しているようです。ですが、農業や鉱山業の生産は伸びており、外貨を稼ぐ産業は好調です。
結局、役に立たない公務員は、首になってるので、大変な目に遭っている人も多いわけですが、本当に社会に役に立つ産業を作るとか、外貨を稼げる産業で働くとか、そういった産業構造を変えている最中だということなのでしょう。
そのため、アメリカでも役に立たない公務員の失業は増えるでしょうし、最低限の支出を除いた、個人消費の落ち込みは、避けられないでしょう。
アメリカの経済ニュースを見ると、経済は思ったよりも強いとか、個人消費が堅調だとか、そういうことが言われていますが、短期的には、こういったリストラや、補助金の削減によって、しんどい思いをする公務員や国とべったりの企業は増えていくと考えられます。
(2)生成AIバブルが崩壊する可能性
2つ目は、生成AIバブルが崩壊する可能性が高い、ということです。
11月2日に、ウォーレン・バフェット氏の投資会社である、バークシャーハザウェイが、アップル株をさらに25%追加で売却していたことが報じられました。
バークシャー・ハザウェイの決算資料から、2023年12月末時点から、24年9月末時点の主な保有銘柄の持分を見てみると、アップル株だけが、異常な売却をしていることがわかります。
なんと、6割も減らしているのです。
他の銘柄では、銀行株のバンクオブアメリカの売却が目立ちますね。それ以外の3銘柄は、この期間の株価の変動率に応じた評価額となっています。
上がりすぎたから、持ち高を調整したとのコメントをしていますが、そんなレベルではありません。
だって、上昇率だけで考えれば、アメックスの方が上がっているわけですからね。
アップル株の1ヶ月あたりの売買代金は、だいたい3,000億ドルぐらいです。
なので、この9ヶ月で2.7兆ドルぐらいの計算になるわけですが、バフェット氏は、アップル株を9ヶ月で約1,000億ドル、約15兆円も売却しているので、全体の売買代金の4%を占めることになります。
これって、もう逃げるように売っていたように見えるのは、私だけでしょうか?
それで、もし仮に、バフェット氏が、大慌てでアップルの株式をこれほど売却しているのだとしたら、その本当の理由は何なのでしょうか?
私の解釈では、ビッグテックを中心に盛り上がっている生成AIがバブルで、いずれ弾けると考えているからではないかと思います。
理由はここから説明します。
生成AIがバブルだと考える理由
現在の米国株は、生成AI用の半導体大手のエヌビディアを中心に盛り上がっています。
このNVIDIAの主力商品は、昨年あたりまではH100と呼ばれるチップでした。
これが、1台500万円以上するシロモノなのですが、それをメタやマイクロソフトなどが、1年間に15万個とか、訳のわからない規模で買いまくったため、売上が2倍に膨れ上がり、株価も1年間で3倍に上昇したのです。
ちなみに、こちらの表は、昨年H100をどの企業が買ったのか?をあるリサーチ会社が調べたものです。
ご覧の通り、メタとマイクロソフトが、15万台と突出していることがわかります。
15万台ということは、1台500万円とすると、7,500億円です。
これほどの金額をAIチップに使っているというのですから、相当な力の入れようのように思います。
では、よほど生成AIが儲かる事業なのだろう、と思うかもしれませんが、全く儲かっていません。
例えば、こちらはチャットGPTの運営会社であるオープンAIの売り上げの見通しについての記事なのですが、なんと2029年まで赤字が続くと発言しています。
しかも、黒字化するまで、7兆円が膨れ上がるだろうと言っているのです。
このような無謀な計画は、オープンAIだけではありません。
今年の8月に、マイクロソフトは決算発表の中で、生成AIが黒字化するのは、今から15年後ぐらいだと発表しているのです。
15年後ですよ?それって、本当に計画と呼べるようなものなんですか?って話です。
そんな状況なので、「生成AIがバブルではないか?」と思う専門家や投資家も増えてきました。
こちらの記事は、今年の6月に出たものですが、ベイン・アンド・カンパニーというコンサルティング会社が、調査したところ、生成AIを事業でどうやって使うのかを明確にわかっている会社は、全体の約1割ということでした。
このような状況のため、生成AIへの投資がこれから爆発的に拡大する、ということは考えにくいのではないか?と疑問に思う人が増えています。
また、こちらは、今年の6月に投資銀行のゴールドマン・サックスが出したレポートですが、レポートのタイトルが「生成AIって、金食い虫のくせに、儲けがほとんどなくね?」というものでした。
この中で書かれている内容も、なかなかに衝撃的です。
業種ごとに生成AIをどれぐらい使っているのか?について、調査をしているのですが、
IT系のビジネスでも2割程度しか使われておらず、自動車や 電子部品などの製造業では、ランク外で5%にも満たないのです。
現在、生成AIは、文章や音楽、画像や動画などの生成に使われています。
使い方は、文章を入力する場合もあれば、いくつかの単語を入力する場合もありますが、AIの方で、ユーザーの意図を汲み取って、文章や画像などを生成します。
確かに、技術の進歩が進んでいるとは感じます。
ですが、その先に、何兆円もの利益が生まれる未来が想像できますか?
ソフトバンクの孫さんが、講演会で生成AIがこれから世界を変えると話していました。
あと10年ぐらいもすれば、AIが知性を持って、人間の代わりに、お金儲けをしてくれるとか、社会問題を解決してくれるとか、そういうことを語っていました。
確かに話を聞いている分には、何だか楽しくなる未来が待っているような気がします。
しかし、足元の生成AIの調教費、つまり、新しいAIを作るための費用は、指数関数的に増加しています。
こちらは、みんな大好き、スタンフォード大学が出しているAIに関するレポートのグラフなのですが、これまでにリリースされた生成AIができるまでにかかった費用になります。
日本で初めて認知された、チャットGPTは、約7,800万ドル、日本円にして、約120億円もかかっています。その後に作られた、グーグルのジェミニは、1.9億ドル、約300億円かかっています。
そして、現在、チャットGPT-5が作られていますが、12.5億から25億ドル、日本円にして、約2,000~4,000億円かかっていると言われているのです。
これまでのGPTシリーズの費用を見てみると、バージョンが1つ上がるたびに、費用は10倍以上に増えていることになります。
もちろん、NVIDIAの生成AIの性能も向上していますので、これからも10倍、10倍と続くかはわかりませんが、それだけ性能を上げようとすると、とんでもない金額がかかる可能性があるのです。
そのような競争なのに、「2029年には黒字になってますよ」「15年後ぐらいには、黒字になってますよ」なんて言葉、本当に信じられますか?
そして、それにお金を投資することができますか?そんな人が、世の中にどれだけいると思いますか?
今はまだ、マイクロソフトやGoogleなどのビッグテックも、生成AIへの投資を、利益の範囲内で行うことができていますから、株式市場もあまり悲観的ではありません。
ですが、新しいAIを作るコストが、これらの企業の利益を上回ってきた場合、いくらお金を注ぎ込んでも、お金が足りなくて、ちっとも新しいヴァージョンが出てこなくなった場合、その時には、間違いなくバブルが崩壊しているでしょう。
これでは、バフェットもギャンブルだと思っても不思議ではありません。
ビッグテックのアップルを必死に売却しているのは、そう言った理由からではないかと思います。
なお、この点については、こちらの書籍「米国株崩壊前夜」を参考にさせていただきました。
増田悦佐先生の著作は、とても面白くて、多くのデータや引用する資料をもとに、議論を展開されるので、とても納得できるものが多いと思います。
私の動画のスタイルも、増田先生の著作を参考にさせていただいております。
それで、こちらの本では、生成AIだけでなく、EVもバブルである理由などについて、詳しく解説されていますので、概要欄にアマゾンのリンクを貼っておきますので、興味のある方は、チェックしてみてください。
(3)ビッグテックの業績低下
3つ目は、ビッグテックの業績低下リスクです。
もともと、ビッグテックなどのIT業界は、民主党政権への献金額が圧倒的に多い業界です。そのため、多少やばいことをしていても、多めに見てもらえているような状況だったと思います。
例えば、日本では昨年あたりから、フェイスブックでの詐欺広告が社会問題化していますよね。ZOZOの創業者である、前澤さんが被害を訴えて、一般の方々の被害額もかなりの額になっているものの、日本の政府が全く動かなかった問題です。
この時期のfacebookの親会社の決算を見てみると、見事に日本の詐欺広告が話題になったあたりから、売上が伸びています。
(参考:メタ 決算資料)
これをみると、Facebookとしては、売り上げを伸ばすために、詐欺広告であろうがなんであろうが、審査を緩めている、と思ってしまいますよね。
そして、このような被害は日本に限りません。
オーストラリアでも、鉱山会社を経営しているアンドリュー・フォレスト氏が、前澤氏のように、勝手に画像を詐欺広告に使われたとして、アメリカで訴訟中です。
今回、トランプ氏が当選したのは、アメリカの治安の悪化や、物価の上昇など、一般庶民の生活が苦しくなっている状況を助けてやると公約したからです。
なので、このような、一般庶民を苦しめる詐欺を放置する可能性は低いでしょう。
訴訟に発展して、多額の罰金を喰らうでしょうし、広告審査を厳格化させることで、広告収入の低下も予想されます。
メタの業績は、広告収入に左右されますので、これから業績悪化に見舞われる可能性は高いと考えられます。
トランプ関税でアップルに打撃
また、ビッグテックが取り扱うスマホやPC、ゲームなどの電化製品は、これからトランプ関税の影響を強く受けることになります。
アップルのアイフォンがわかりやすいと思いますが、中国の安い工賃で作られたアイフォンを、アメリカに輸出することで儲けてきた訳ですが、この手がこれからは使えなくなるのです。
そのため、価格を値上げするか、利益率を減らすか、どちらかを選ぶことになります。
すでに、アイフォン16の売り上げは、思うように言っていないと言われており、今後はさらに業績が悪化する可能性が高いと思われます。
2、まとめ
というわけで、「トランプ政権になって、米国株がこれから下がるのではないか?」と私が思っているポイントを3つ、ご紹介しました。
私は、今回のトランプ政権が、これまでの世界がひっくり返るぐらいの、やべえインパクトがあると思っています。
なので、このような予想となりましたが、おそらく、マスコミや経済の専門家の多くは、そこまで極端なことにはならないだろう、と予想すると思います。
なので、もし、本当に下がり始めてきたら、こう言ったシナリオに沿って動いているかもしれない、ぐらいに捉えてもらった方がいいかもしれませんね。
また、今後もトランプ氏の政策がはっきりとしてきたり、政権が始まって、新しい情報が入ってきた場合など、随時更新していきたいと思います。
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