この記事では広島県の
- この7年間の土地価格の動き
- 新型コロナの影響を含め、今後どうなるのか?
の2点について解説しています。
1、過去7年間の広島県の不動産の上がり方の特徴とは?
まずはじめに、この7年間で広島県内の不動産が、どのような動きをしてきたのかをザッと見ていきましょう。
この7年間の広島県の公示地価を調べてみると、住宅地は0.4%の下落をしていました。
全国平均に比べると劣りますが、近隣県の岡山と山口と比べると、比較的安定していました。
なんで「不動産バブル」って言われてるのに、むしろ下がっているんだろう?
そう思っちゃいますよね。
そこで、今度は市区町村別に、この7年間の住宅地の上昇率を見てみましょう。
広島県で住宅地が上昇しているのは、広島市周辺
ご覧のように、市区町村単位で見ると、広島市とその周辺しか上昇しておらず、東側では10%以上も下落している市も多くあります。
そもそも、今回の「不動産バブル」は、何が理由なのか?
そもそも、今回の「不動産バブル」は、2013年4月から始まった日銀の異次元緩和が原因です。
それまでの銀行の商売は、わたしたちから100万円預かったら、それで国債を買って、国から利息として1万円もらう代わりに私たちには100円ぐらいの利息をつけてて稼ぐ、ということをやっていました。
ですが、こんなことをしても、ちっとも景気も良くなりません。
そこで、日銀が銀行から国債を買い取ってしまい、「その浮いたお金を使って、どこかに貸して本業で稼ぎなさい!」
とやってしまったのです。
それで困った銀行は、不動産業者に融資をすることにしました。
この5年間で、企業や個人がお金を稼ぐために銀行から借りたお金(設備資金と言います)は、なんとその8割近くが不動産関連だったのです。
製造業はわずか1.7%、そのほとんどが不動産関係
お金が借りやすくなった企業や個人は、そのお金でバンバン、アパートやマンションを建てました。
その一部が、「かぼちゃの馬車」や「サブリース問題」「スルガ銀行の不正融資」などで個人の不動産投資家が餌食になっているんですね。
低金利によって、買い手の購買力が上がった
それに加えて、住宅地でも大きな追い風がありました。
それが金利の低下です。
異次元緩和によって、住宅ローンが約1%下がったのです。
(参考:ARUHI住宅ローン フラット35金利の推移 財務省 国債金利情報)
ザックリ言うと、この5年間で買い手は、同じ返済額で2割高い物件を買えるようになったということです。
例えば、フラット35で期間35年・3,000万円の住宅ローンを組んだ場合、月々の返済額は1.4万円も減りました。
異次元緩和前後のフラット35の返済額
*融資手数料:2.16%として計算
①緩和前 (2013年3月) | ②緩和後 (2019年1月現在) | ②ー① | |
フラット35の金利 (団信込み) | 2.27% | 1.33% | -0.94% |
月々の支払額 | 103,500円 | 89,400円 | -14,100円 |
総支払額 | 4,415万円 | 3,819万円 | -596万円 |
ご覧の通り、返済額で月1.4万円、総額で約600万円減った計算になります。
言い換えると、月々10.4万円の返済で、3,000万円の物件から3,500万円の物件まで買えるようになったことになります。
金利の低下によって、高い物件が買えるようになった
つまり、金利が下がったことで、買い手の購買力が上がったため、値上げにも簡単に応じられてきたわけです。
なぜ、これほど下落している地域が多いのか?
理由は2つあります。
①公共事業の減少で土地価格が下落した
1つ目は、公共事業の減少です。
広島県の住宅地のピークは、1991〜92年ごろになりますが、本格的な下落は2000年ごろからでした。
その理由は、公共事業の予算があまり減らなかったからです。
県内で仕事がたくさんあったので、働く人の給料もその当時まではあまり下がらなかったんですね。
広島県の公共事業は、この20年でほぼ半分に
しかし、「不良債権」という言葉が話題になり始めた2001年ぐらいから、公共事業がどんどん減っていきました。
そのため、地方ではどんどん仕事がなくなってしまい、給料が減り、そして土地価格が下落していったのです。
②人口が減って、家を買う人が減った
2つ目が、人口の減少です。
家を建てる中心年代である30代の人口は、2008年ごろがピークでした。
広島県では、すでにこの10年間で10万人以上減少しているのです。
家を買う年代が減れば、家を建てる人は減りますから、この5年間でも着工件数は増えていません。
しかも、多くの人は郊外の新しいエリアに家を建てるため、駅近のエリアしか土地価格が上がらなくなってしまったんですね。
上昇している地域の特徴とは?
では、なぜ広島市の周辺だけが上がっているのでしょうか?
理由は2つあります。
①マツダなどの製造業が円安で好調
1つは、マツダなどの製造業の好調さです。
この5年間は日銀の異次元緩和によって、円ドル相場が110〜120円台の円安が続いてきました。
この円安によって、輸出する製造業の業績が回復し、雇用が増えているのです。
異次元緩和が始まった2013年からマツダの業績が急回復
雇用が増え、給料が増えれば、家を買う人も増えます。
共働き世帯も増えていますし、通勤しやすい「職住近接」のマンションや戸建てが人気となり、駅周辺の土地価格が上昇しているのです。
②外国人観光客数が増加
そしてもう1つが、外国人観光客数の増加です。
円安になったことで外国人にとって旅行しやすくなっていますし、オリンピック開催決定によって日本に注目が集まっていますからね。
そのため、広島県内でも外国人観光客数が、この5年間で50万人から150万人にまで膨らんでいます。
外国人観光客が増えると、宿泊や買い物で充実している広島市にお金が落ちますから、商業地が潤います。
そのため、雇用も増えて近くに家を買ったり、賃貸アパートが建ったりして、土地価格が上昇しているのです。
2、新型コロナの影響はどうなのか?
新型コロナウイルスの感染拡大によって、3月末から緊急事態宣言が全国的に出され、多くの産業がストップし、売り上げが激減しました。
ですが、9月の中間決算を見てみると、航空、鉄道、飲食、百貨店などの一部の業界では大きく売り上げを落としていますが、それ以外の業界では黒字を確保しており、あまり影響が出ていないようです。
産業 | 企業名 | 4〜9月売上(前年同期比) | 損益(億円) |
航空 | 全日空 | -72.4% | -1,885 |
鉄道 | JR東 | -48.2% | -2,644 |
百貨店 | 三越伊勢丹HD | -41.8% | -368 |
飲食 | ワタミ | -36.8% | -72 |
自動車 | トヨタ | -26.0% | 6,293 |
電機 | 日立 | -10.9% | 2,508 |
(参考:各社の決算発表資料より)
実際、今年の冬のボーナスは、大企業でみると、平均9%の減少とあまり影響はありませんでした。
(参考:サンケイビズ「冬のボーナス9%減少 経団連調査 大企業で8年ぶり減少 中小以下でも厳しさ増す」)
中小企業では、もっと影響は大きい可能性はありますが、これほどの減少で済んでいるということは、今のところ、コロナの影響が深刻なところがごく一部だということでしょう。
そのため、飲食店や百貨店などの賑わう商業施設では、売り上げ減少や店舗の閉店によって影響を受けそうですが、住宅地に対する需要はあまり影響はないようです。
広島県では、広島市周辺の商業地が特に危ない
9月29日に発表された基準地価を見ると、特に広島市周辺で影響が大きいようです。
これまでマツダ自動車の好調な決算によって、雇用も消費も支えられてきた側面が大きかったわけですが、海外への輸出も厳しくなり、消費も減退となってしまい、逆回転に陥っている状況です。
ですが、今のところ、影響があるのは商業地周辺だけで、ほとんどの住宅地ではそれほど影響はないようです。
実際、持ち家の着工件数を見てみても、ほぼ前年並みとなっており、家を建てる人が減っているわけではありません。
超低金利なので、月々の返済額の負担が低いまま借りられますし、子育てで広い部屋が欲しくなりますから、高い家賃で広い部屋を借りるよりも、資産として家が残る持ち家を選ぶ人が多いのでしょう。
一方で、商業地については、感染が拡大すると自粛要請がされますし、ワクチンもまだまだ当分接種できないので、閉店するお店はまだまだ増えそうです。
そのため、商業地や観光地の土地価格はまだまだ厳しそうです。
3、その他のリスク
新型コロナ以外にも、どんなリスクがあるのかをまとめました。
(1)この低金利はいつまで続くのか?
地域によって上がった場所、下がった場所の違いはあるものの、日銀の異次元緩和政策で生まれたこの超低金利は、土地価格を押し上げるプラス要因でした。
そして、これ以上は、金利が下がらない水準まで来ています。
むしろ、その副作用の方が話題になることが増えました。
例えば、預金者のお金を国債で運用していた地銀は、この異次元緩和によって、金利が低下したことで利息収入が減り、半数以上が赤字になっています。
赤字の地銀がどんどん増えている
赤字が続けばいずれ倒産してしまいますから、いつまでも続けるわけにはいきません。
では、具体的にあとどれぐらいなのか?
ブルームバーグが経済の専門家45人にアンケートをしたところ、半数以上が2〜3年以内に限界が来ると予想していました。
半数以上が2〜3年以内に限界と回答
(参考:ブルームバーグ「2年以内で限界」が半数弱、現行の長短金利操作-日銀サーベイ)
このアンケートは2018年6月にされたものなので、「2020〜21年前後に限界が来る」と考えている専門家が多いことになります。
聞き取り当時は、オリンピックが開催されると思われていたので、この頃までは好景気も続くだろうという予想があったので、その頃までは地銀の経営状態も持つと思われていたのでしょう。
ですが、今回の新型コロナ騒動によって、地銀の経営はさらに苦しくなってきました。
銀行の経営が厳しくなれば、日本の国債に対する信頼性も下がります。海外の投資家が国債の売却をする可能性も高まります。
そうすると、金利が上昇しますので、不動産価格は下落していきます。
金利が上がると、同じ返済額でも買える価格が下がる
そのため、今後の経済状況次第では、金利上昇による不動産価格の下落も考えておいた方がいいでしょう。
(2)これから広島県の人口はどうなるの?
国立社会保障・人口問題研究所が、今年発表した広島県の人口の見通しによると、2030年までに8.6万人減少するそうです。
広島県の人口は、2030年までに8.6万人減る
(出典:国立社会保障・人口問題研究所 平成30年度人口推計)
また、家を買う中心年代である20〜40代も、2030年までに12.9万人減る見通しです。
広島県の20〜40代人口は、2030年までに12.9万人減少
(出典:国立社会保障・人口問題研究所 平成30年度人口推計)
家の買い手が今よりも1割減るので、これまで通りの上昇は見込めなくなるかもしれません。
結論:売るなら?買うなら?
というわけで、広島県の今後の土地価格についての結論は、以下の通りです。
- 今回の土地価格の上昇は、日銀の異次元緩和がきっかけ
- 広島県では人口の減少が進んでいるため、広島市の周辺を除いて、土地価格の下落がすでに始まっている
- 新型コロナの長期化で、店舗の閉鎖が増えるため、商業地の下落が加速する
- これから気をつけたいのは「金利」。特に日銀の異次元緩和が終了すれば、金利上昇で土地価格はさらに下がる
と言えそうです。
買うなら:商業地の周辺は様子見、それ以外は買い
新型コロナの影響が大きい商業地の周辺では、今後も影響が出ますので、坪単価が高いと感じられる場合には、まだ様子見の方がいいでしょう。
しかし、それ以外のエリアでは今が買い時の可能性が高いと思われます。
その理由は2つあります。
①土地価格の下落分よりも、待っている間の家賃の方が高くつく
例えば、坪30万円ぐらいの土地であれば、40坪でも1,200万円程度で買えます。
仮に数年で1割下げたとして120万円ぐらいしか安くなりませんから、その間の家賃を考えると、早めに買った方がトクになりますよね。
②異次元緩和で低金利の今がチャンス
また、現在は住宅ローンがかなり安いため、月々の返済負担が軽いのもチャンスです。
ですから、もし家を買おうと思っているのならば、土地価格が下がるのを待つよりも、金利が上がる前の今のうちに買うのがベストでしょう。
ただし、購入を検討する場合には、今後の金利上昇を想定しておかないと大変なことになるので、「フラット35」か「10年以上の固定金利」でも返済ができるかどうかで予算を考えるべきでしょう。
非公開物件=安い物件
不動産を売る理由はさまざまですが、「周りに知られずに売却したい」という売主は一定の割合でいます。
そのような物件は、ネット上にも出回らず「非公開物件」として登録されます。
また、売主はあまり相談する相手を広げたくないため、まずは建てたメーカーに相談する場合が多いです。
当然、このような物件は少ないお客さんにしか目にとまる機会がないため、相場よりも価格の安い可能性が高いのです。
こちらの「タウンライフ」に登録すると、お近くの複数の不動産会社から、非公開物件の情報を教えてもらえます。
価格が下がるのを待ちたい人でも、こちらで格安物件を見つければ、「低金利」と「安い物件」の2つの美味しいところが狙えるでしょう。
売るなら:金利が上がる前に売った方がいい
アベノミクス以降のこの7年間は金利の低下によって、買い手が月々の返済額を引き上げなくても値上がりした家を買える時期でした。
不動産を売るなら、金利の低い今が1番のチャンスと言えます。
特にコロナショックの影響は、長期間になる可能性もあり、景気が悪化するほど買い手が減っていきますので、今のうちに準備をしておいた方が後悔しないはずです。
公示地価を信じると損をする?
この記事では公示地価をもとに解説していきましたが、公示地価は「その地域の平均的な価格」なため、実際の取引ではこれ以上に高く、または安く取引されることがあります。
例えば、福山市内に「沖野上町(おきのがみちょう)」という、福山駅から2kmほど南に位置する住宅地があります。
こちらの公示地価と実際の取引を比べてみると、
- 公示地価:24万円/坪
- 実際の取引価格:6.9〜34万円/坪
と、公示地価の約0.3〜1.4倍で取引されていました。
取引価格同士で比べると、4.9倍の価格差があります。
このような感じで、全国の公示地価と実際の取引を調べてみたのですが、やはり公示地価と実際の取引ではかなりの価格差があることがわかりました。
同じ地域なのに、
「公示地価の3割増し、場合によっては2倍以上の価格で取引されている」
といった取引がゴロゴロ見つかったのです。
都道府県 | 住所 | 公示地価/坪 | 取引価格/坪 | 公示地価の何倍? |
---|---|---|---|---|
広島県 | 広島市牛田早稲田 | 40万円 | 19〜80万円 | 0.48〜2倍 |
広島県 | 福山市沖野上町 | 24万円 | 6.9〜34万円 | 0.29〜1.42倍 |
広島県 | 呉市広白岳 | 17万円 | 7.4〜21万円 | 0.44〜1.24倍 |
広島県 | 尾道市高須町 | 18万円 | 18〜25万円 | 1〜1.39倍 |
広島県 | 東広島市西条町西条 | 18万円 | 5.3〜25万円 | 0.29〜1.39倍 |
広島県 | 廿日市市串戸 | 42万円 | 22〜53万円 | 0.52〜1.26倍 |
広島県 | 三原市皆実 | 20万円 | 16〜29万円 | 0.8〜1.45倍 |
岡山県 | 岡山市田中 | 33万円 | 35〜47万円 | 1.06〜1.42倍 |
岡山県 | 倉敷市大島 | 31万円 | 13〜35万円 | 0.42〜1.13倍 |
岡山県 | 津山市東一宮 | 10万円 | 4.5〜12万円 | 0.45〜1.2倍 |
鳥取県 | 鳥取市吉方温泉 | 17万円 | 5〜19万円 | 0.29〜1.12倍 |
鳥取県 | 米子市観音寺新町 | 16万円 | 15〜20万円 | 0.94〜1.25倍 |
島根県 | 松江市内中原町 | 26万円 | 26〜32万円 | 1〜1.23倍 |
島根県 | 出雲市塩冶町 | 16万円 | 12〜18万円 | 0.75〜1.13倍 |
山口県 | 下関市綾羅木南町 | 13万円 | 20万円 | 1.54倍 |
山口県 | 山口市小郡下郷 | 16.5万円 | 8.9〜19万円 | 0.54〜1.15倍 |
山口県 | 宇部市笹山町 | 7.3万円 | 10〜13万円 | 1.37〜1.78倍 |
山口県 | 周南市富田 | 18万円 | 17〜24万円 | 0.94〜1.33倍 |
山口県 | 岩国市今津町 | 27万円 | 22〜32万円 | 0.81〜1.19倍 |
山口県 | 防府市東仁井令町 | 9.5万円 | 8.5〜12万円 | 0.89〜1.26倍 |
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