この記事では福岡県の
- この7年間の土地価格の動き
- 新型コロナの影響を含め、今後どうなるのか?
の2点について解説しています。
1、過去7年間の福岡県の不動産の上がり方の特徴とは?
まずはじめに、2013年に始まった日銀の異次元緩和以降、この7年間で福岡県内の不動産が、どのように上昇してきたのかをザッと見ていきましょう。
この7年間の福岡県の公示地価を調べてみると、住宅地は約9.6%の上昇をしていました。
九州の中では、一人勝ちの状況です。
では、具体的にどこが上昇、または下落しているのか?
今度は市区町村別に、この7年間の住宅地の上昇率を見てみましょう。
福岡県で住宅地が上昇しているのは、福岡市周辺
ご覧のように、市区町村単位で見ると、福岡市を中心に、近いエリアほど上昇しているようです。
福岡市だけでなく、春日市、大野城市などでも7年で平均10%以上の上昇をしています。
それとは対照的に、北九州市では5%以上の下落をしています。
大都市だから上昇している、というわけではなさそうです。
なぜ福岡県では、福岡市などの一部のエリアしか上昇していないのか?
最初に結論をまとめておきます。
- 金利が低下したことで、同じ返済額でより高い物件が買えるようになった
- 外国人観光客が増えたことで、ホテルや商業施設が増え、雇用も増えたため、福岡市の周辺で土地価格が上昇してきた
- その一方で、福岡県全体で見ると、人口は減少傾向している市町村が多く、農地の宅地化が進んでいることもあって、人気のない郊外の土地価格は下落傾向にある
という、主に福岡市周辺のエリアとそうでないエリアとの間で、土地価格の二極化が進んでいたと考えられます。
では、これから1つずつ詳しく解説していきます。
①金利低下によって、買い手の購買力が上がった
そもそも、全国的に土地価格が上昇しているのは、金利の低下によるところが大きいです。
2013年4月から始まった日銀の異次元緩和によって、金利が大きく低下したのです。
(参考:ARUHI住宅ローン フラット35金利の推移 財務省 国債金利情報)
ザックリ言うと、この7年間で買い手は、同じ返済額で2割高い物件を買えるようになったということです。
例えば、フラット35で期間35年・月々の返済額が10.4万円とした場合、購入できる不動産は3,000万円から3,500万円まで上がったのです。
同じ返済額で購入できる物件価格が2割上昇した
そのため、人気のエリアでは土地価格が上昇しやすくなりました。
月々の支払額は増やさずに、約2割高い物件を買える。しかもその物件が人気化しているとなれば、値段が高くても買おうとする人は増えますよね。
その結果、都心部では通勤需要から人気化した駅近のマンションが値上がりし、郊外のエリアではショッピングモールや、大規模な新興住宅地で上昇しやすくなったのです。
なので、そもそも福岡県内でも、上がりやすい環境にあったのです。では、なぜ福岡市とその周辺のエリアだけが、上昇しているのでしょうか?
②外国人観光客の恩恵が福岡市に集中
その理由は、外国人観光客の増加です。
2013年9月に東京がオリンピックの開催地に決定してから、福岡県内の宿泊客数が、どんどん増えてきたのです。
特に外国人の宿泊客数は、2013→19年までに約100万人→400万人と、ほぼ4倍にまで膨れ上がりました。
中でも博多港は、外国人観光客の寄港数が日本一の港のため、買い物や宿泊施設が充実している福岡市内で、ホテルや商業施設の開発が進み、雇用も増えてきたため、土地価格が上昇してきたわけですね。
その結果、周辺の住宅地でも連れ高をして、福岡市内の中心部に近いエリアほど、住宅地も大きく上昇してきたのです。
③しかし、福岡県内では、若い世代の人口が減少している
その一方で、福岡県内の人口は、特に若い世代において減少傾向にあります。この7年間で約2万人減少しているのです。
(参考:総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」)
では、具体的にどこが、どれだけ減少しているのか?総人口についてですが、市町村別に調べてみました。
市区町村別の人口の変化(2013〜2020年)
増減数:赤色(+1万人以上)>オレンジ色(+5,000〜9,999人)>緑色(+1〜4,999人)>青色の↙️(−1〜4,999人)>紫色の↙️(−5,000人以上)
(参考:総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」)
ご覧の通り、福岡市を中心に、その周辺の市町村で増加しているものの、それ以外のエリアでは減少傾向にありました。
北九州市でも、増加しているのは中心部の小倉北区のみで、他の市ではすでに減っています。いかに福岡市への一極集中が進んでいるのかが分かりますね。
④農地の宅地化も追い討ち
さらに、郊外の市町村については、農地の宅地化も土地価格の下落を加速させています。
実は、この10年で、福岡県内の農地は、約0.5万ヘクタール(ha)も減っているのです。
1haで約3,000坪ですので、30坪の戸建てに換算すると、約50万戸分の農地が住宅や、道路、工場、倉庫、ショッピングモールなどに変わっているのです。
農地が残っているエリアは、駅から離れた郊外に分布していることが多いです。
そのような農地が宅地化されると、数十戸単位の新しい街並みになるため、人気が集中する反面、それ以外の古い住宅地の需要が減り、土地価格が下がってきてしまうわけです。
2、新型コロナの影響はどうなのか?
福岡県の住宅地は、逆に上昇しているエリアもある
公示地価は、1月1日現在の土地価格であるのに対して、基準価格は7月1日現在の価格です。
そして、一部の土地については、1月と7月のどちらの価格も算出されているので、それらを比較することでコロナの影響を確認できます。
福岡県の住宅地のコロナによる影響(1月→7月の変化率)
変化率:赤色(+0.1〜1%)>緑色(変化なし)>青色の↙️(-0.1〜0.9%)>紫色の↙️(-1.0〜1.9%)>黒色の↙️(-2%以下)
ご覧の通り、観光業が打撃を受けているため、博多駅周辺の盛り上がっていた商業エリアに近い住宅地では下落しているものの、通勤目的でそこそこ離れている住宅地では、むしろ上昇しているエリアが目立ちました。
今回のコロナによって影響を受けているのは、主に飲食店や観光業、ホテルなどの一部の業種ですので、商業地では大きな影響を受けています。
ですが、住宅地に限って見てみると、それ以外の業種で勤めている人の住宅に対する需要はそれほど下がっておらず、通勤に便利であまり価格が高くないエリアほど、影響が少なかったようです。
福岡県内の住宅地でも、これから影響が広がっていく
2021年に入って、新型コロナの感染者数がさらに拡大しており、福岡県は2月7日まで緊急事態宣言によって、行動の自粛が要請されました。
具体的には、
- 飲食店に対する営業時間の短縮
- 外出、イベントなどの制限
- テレワークの推奨、20時以降の勤務抑制
などの要請が出されています。
昨年の緊急事態宣言によって、主に商業地の土地価格に影響が広がりましたが、今後は住宅地においても、徐々にですが影響が広がっていきそうです。
ワクチン接種に時間がかかる
というのも、感染の収束までに、まだまだ時間がかかりそうだからです。
今年の6月ごろには調達の目処がつきつつあるワクチンですが、本当であれば数年かかる承認を1年程度まで早めているため、副作用を心配する人が多いと思われます。
実際、「コロナワクチンを接種したいか?」という質問に対して、すぐに接種したいと回答した人は1割程度で、多くの方が副作用などの影響を見極めた上で、接種を検討しているようです。
(参考:「【新型コロナワクチン】6割以上の方が「すぐにではなく、いずれ接種したい」)
ということは、ワクチン接種による感染収束は、おそらく、来年以降になる可能性が高いのではないでしょうか。
イギリスでは、新種ウイルスも出てきた
現在イギリスで異なる種類のコロナウイルスが出てきており、3度目のロックダウンに入っています。
今回のロックダウンは、当初は4月までという見通しだったようですが、その予想を取り下げ、いつまで続くかわからない状況となっています。
(参考:ブルームバーグ「ジョンソン首相、3度目の英ロックダウンは夏まで継続も-罰則を強化」)
しかも、この新種のウイルスは、日本にもすでに入ってきているようですので、今準備されているワクチンで収束可能なのか不明です。
すでに赤字の企業はリストラモードへ
このような不透明な状況のため、赤字企業では、希望退職の募集が増えています。コロナ前の2019年は約1.1万人だったのが、1.8万人にまで増えています。
(参考:「上場企業「早期・希望退職」募集、20年は2.6倍に急増 コロナ禍で赤字リストラ目立つ」)
このことからも、今後は住宅の買い手が少しずつ減っていくことが予想されますので、よほど人気のエリアでなければ、土地価格は下落傾向に進みそうです。
3、その他のリスク
新型コロナ以外にも、どんなリスクがあるのかをまとめました。
(1)この低金利はいつまで続くのか?
地域によって上がった場所、下がった場所の違いはあるものの、日銀の異次元緩和政策で生まれたこの超低金利は、土地価格を押し上げるプラス要因でした。
そして、これ以上は、金利が下がらない水準まで来ています。
むしろ、その副作用の方が話題になることが増えました。
例えば、預金者のお金を国債で運用していた地銀は、この異次元緩和によって、金利が低下したことで利息収入が減り、半数以上が赤字になっています。
赤字の地銀がどんどん増えている
赤字が続けばいずれ倒産してしまいますから、いつまでも続けるわけにはいきません。
ちなみに、2005年にペイオフが解禁となっていますので、もし倒産した銀行にお金を預けていると、1,000万円しか戻ってこなくなるので、大混乱になります。
では、具体的にあとどれぐらいなのか?
ブルームバーグが経済の専門家45人にアンケートをしたところ、半数以上が2〜3年以内に限界が来ると予想していました。
半数以上が2〜3年以内に限界と回答
(参考:ブルームバーグ「2年以内で限界」が半数弱、現行の長短金利操作-日銀サーベイ)
このアンケートは2018年6月にされたものなので、2020〜21年前後となります。
聞き取り当時は、オリンピックが開催されると思われていたので、オリンピック前後と考える人が多かったと言えます。
この頃までは好景気も続くだろうという予想があったので、その頃までは地銀の経営状態も持つと思われていたのでしょう。
金利の上昇が始まった?
そして、最近ですが、アメリカの金利上昇が本格化してきたことで、日本でも5年ぶりの水準にまで上昇してきました。
(参考:ブルームバーグ「長期金利5年ぶり高水準、市場は日銀の政策点検に絡む対応を注目」)
(参考:財務省、 FRB of St.Louis)
2021年2月25日現在、日本の10年国債の金利は0.149%ということで、まだ低いですが、それでも5年ぶりの水準にまで上がってきています。
このような状況を受けて、大手銀行を中心に、住宅ローンの金利を引き上げる動きが始まっています。
(参考:NHKニュース「長期金利上昇 大手銀行 住宅ローン金利引き上げの動き」)
そもそも、日米の中央銀行が行っている異次元緩和政策は、お金を刷りまくって国債や株を買うものなので、お金に対する信頼が下がっていく政策です。
そのため、円安や金利上昇が起こるリスクのある政策であり、コロナによって、各国の中央銀行が無理をしてきた結果、金利上昇が始まっているのかもしれません。
もし仮に、このまま金利が上昇し続ければ、住宅ローン金利も上がるため、買える物件価格が下がりますので、土地価格も下がります。
ちなみに10年国債の金利が1%ぐらいにまで戻れば、土地価格は15%〜20%は下がると考えられます。
金利が上がると、同じ返済額でも買える価格が下がる
そのため、今後の経済状況次第では、金利上昇による不動産価格の下落も考えておいた方がいいでしょう。
(2)これから福岡県の人口はどうなるの?
国立社会保障・人口問題研究所が、今年発表した福岡県の人口の見通しによると、2030年までに14.2万人減少するそうです。
福岡県の人口は、2030年までに14.2万人減る
(出典:国立社会保障・人口問題研究所 平成30年度人口推計)
また、家を買う中心年代である30〜40代も、2030年までに約22万人減る見通しです。
福岡県の30〜40代人口は、2030年までに約22万人減少
(出典:国立社会保障・人口問題研究所 平成30年度人口推計)
家の買い手が今よりも1割以上減るので、これまで通りの上昇は見込めなくなるかもしれません。
結論:売るなら?買うなら?
というわけで、福岡県の今後の土地価格についての結論は、以下の通りです。
- 金利の低下と外国人観光客数の増加が追い風となったものの、若い世代の人口は減少しているので、福岡市周辺とそれ以外のエリアで二極化が進んでいる
- 新型コロナの影響で、外国人観光客をあてにしてきた商業施設、ホテルの売り上げ減少が大きいため、商業地の土地価格が大きく下落する
と言えそうです。
買うなら:商業地の周辺は様子見、それ以外は買い
新型コロナの影響が大きい商業地の周辺では、今後も影響が出ますので、坪単価が高いと感じられる場合には、まだ様子見の方がいいでしょう。
しかし、それ以外のエリアでは今が買い時の可能性が高いと思われます。
その理由は2つあります。
①土地価格の下落分よりも、待っている間の家賃の方が高くつく
例えば、坪50万円ぐらいの土地であれば、30坪でも1,500万円程度で買えます。
仮に数年で1割下げたとして150万円ぐらいしか安くなりませんから、その間の家賃を考えると、早めに買った方がトクになりますよね。
②異次元緩和で低金利の今がチャンス
また、現在は住宅ローンがかなり安いため、月々の返済負担が軽いのもチャンスです。
ですから、もし家を買おうと思っているのならば、土地価格が下がるのを待つよりも、金利が上がる前の今のうちに買うのがベストでしょう。
ただし、購入を検討する場合には、今後の金利上昇を想定しておかないと大変なことになるので、「フラット35」か「10年以上の固定金利」でも返済ができるかどうかで予算を考えるべきでしょう。
非公開物件=安い物件
不動産を売る理由はさまざまですが、「周りに知られずに売却したい」という売主は一定の割合でいます。
そのような物件は、ネット上にも出回らず「非公開物件」として登録されます。
また、売主はあまり相談する相手を広げたくないため、まずは建てたメーカーに相談する場合が多いです。
当然、このような物件は少ないお客さんにしか目にとまる機会がないため、相場よりも価格の安い可能性が高いのです。
こちらの「タウンライフ」に登録すると、お近くの複数の不動産会社から、非公開物件の情報を教えてもらえます。
価格が下がるのを待ちたい人でも、こちらで格安物件を見つければ、「低金利」と「安い物件」の2つの美味しいところが狙えるでしょう。
売るなら:金利が上がる前に売った方がいい
アベノミクス以降のこの7年間は金利の低下によって、買い手が月々の返済額を引き上げなくても値上がりした家を買える時期でした。
不動産を売るなら、金利の低い今が1番のチャンスと言えます。
特にコロナショックの影響は、長期間になる可能性もあり、景気が悪化するほど買い手が減っていきますので、今のうちに準備をしておいた方が後悔しないはずです。
公示地価を信じると損をする?
この記事では公示地価をもとに解説していきましたが、公示地価は「その地域の平均的な価格」なため、実際の取引ではこれ以上に高く、または安く取引されることがあります。
例えば、福岡市南区に「大楠(おおぐす)」という、高宮駅の北側に広がる住宅地があります。
こちらの公示地価と実際の取引を比べてみると、
- 公示地価:56万円/坪
- 実際の取引価格:69〜97万円/坪
と、公示地価の約1.2〜1.7倍で取引されていました。
最高価格は、最低価格の約1.4倍です。
このような感じで、全国の公示地価と実際の取引を調べてみたのですが、やはり公示地価と実際の取引ではかなりの価格差があることがわかりました。
同じ地域なのに、
「公示地価の3割増し、場合によっては2倍以上の価格で取引されている」
といった取引がゴロゴロ見つかったのです。
都道府県 | 住所 | 公示地価/坪 | 取引価格/坪 | 公示地価の何倍? |
---|---|---|---|---|
福岡県 | 福岡市南区大楠 | 56万円 | 69〜97万円 | 1.23〜1.73倍 |
福岡県 | 北九州市八幡西区永犬丸西町 | 17万円 | 10〜21万円 | 0.59〜1.24倍 |
福岡県 | 久留米市諏訪野町 | 22万円 | 15〜27万円 | 0.68〜1.23倍 |
福岡県 | 飯塚市伊岐須 | 7.6万円 | 11万円 | 1.45倍 |
福岡県 | 大牟田市大字草木 | 8万円 | 5.6〜12万円 | 0.7〜1.5倍 |
福岡県 | 筑紫野市二日市西 | 25万円 | 12〜33万円 | 0.48〜1.32倍 |
福岡県 | 大野城市瓦田 | 43万円 | 22〜79万円 | 0.51〜1.84倍 |
福岡県 | 春日市春日原南町 | 56万円 | 58〜76万円 | 1.04〜1.36倍 |
福岡県 | 宗像市田久 | 11万円 | 8.7〜12万円 | 0.79〜1.09倍 |
福岡県 | 糸島市志摩師吉 | 8.5万円 | 4.7〜12万円 | 0.55〜1.41倍 |
福岡県 | 行橋市西宮市 | 17万円 | 19〜22万円 | 1.12〜1.29倍 |
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